2. 精巧なミニチュアの数々
続いては、ミニチュアセットの細部に迫ります。
三池氏によれば、このセットは須賀川のどこかにあるかもしれないような風景をイメージして制作されたものであり、そのため市内に実在するお店がモデルとなった看板など、須賀川らしさを感じさせる小物が随所に置かれています。

須賀川市マスコットキャラクター「ボータン」の看板
また、セット内のミニチュアはその多くが過去の特撮作品にて制作・使用されたものです。今回はそのうち2点ほどを取り上げてご紹介します。
1点目はセット中央、十字路の一角に配置された二階建ての建物のミニチュアです。【写真中央】
こちらは『ウルトラマンレオ』(1974-75年)などの複数の特撮作品にて使用されました。綺麗に仕切られた窓枠が特徴の、シンプルなつくりの建物となっています。
さらに、写真に写る看板は『ガメラ2 レギオン襲来』(1996年)や『ウルトラマンメビウス』(2006-07年)などの作品に登場したものです。表面にプリントされた店名や広告の書き込み、裏面の骨組みの精巧さには驚かされます。
このように、一度撮影に使ったあと何度も再使用ができる点は、ミニチュアならではの特性であり良さであると言えます。
2点目はセット右側の高台に配置された一軒家のミニチュアです。
昔懐かしい雰囲気の漂う日本家屋を模したこちらのミニチュアは、株式会社マーブリングファインアーツにより製作され、平成「ガメラ」シリーズにて使用されたものです。瓦屋根の凹凸や壁の木の継ぎ目など、伝統的な造形が忠実に再現されています。そして何より目を見張るのは小物のディティールです。壁に取りつけられた郵便箱や室外機、ベランダに干された洗濯物、屋上のアンテナ、軒下に置かれた雑誌やごみ袋……。挙げればきりがありませんが、細部に至るまで一切手を抜かず作られていることがうかがえます。
ミニチュアは現実で撮影することのできない光景を表現するために用いられるものであり、そのためいかにリアリティのあるミニチュアを作り上げることができるかという点は、作品全体の質を大きく左右する存在であると考えることができます。そして、そうしたミニチュアのもつ力を信じる人々によって込められた情熱は、この一軒を眺めるだけでも十分に伝わってくるように思われます。
来館の際はぜひ、ご紹介した技法や細かな工夫に注目しながらミニチュアセットをご鑑賞ください。
■基本情報■
(1)名 称:ミニチュアセット ~須賀川にありそうな風景~
(2)設計者:三池敏夫
(3)セット設営協力:株式会社特撮研究所
(4)寸 法:約3.6m×5.4m
(5)材 質:木材、ベニヤ、金属 他
(参考文献)
・須賀川特撮アーカイブセンターパンフレット裏面案内図(画:樋口真嗣)